隷堕の黒剣士3話

隷堕の黒剣士3話

「――っ! ――っ!」
 廃墟都市。日も沈みかけた閑散とした市街地の中央広場に一人の手負いの男が疲労困憊の足に鞭を打って必死になって身を隠す場所を探す。
 銃撃を負った左腕を押さえ、今唯一の手持ち武器である拳銃を片手に負傷した腕を守るように周囲に銃口を向けて警戒する。

「――――年貢の納め時だな。鬼城」

「!」
 真正面。
 敗走する鬼城の行く手を阻むように一人の男が現れた。
 サブマシンガンのウージーを片手に悠々と歩いて来る彼と同時に周囲からぞろぞろと銃などで武装した男たちが現れ、鬼城を取り囲んだ。
 行く手を阻まれ、じわじわと詰め寄る彼らに押されて中央広場のど真ん中に為す術なく彼は立ち尽くした。
「あんたを仕留めれば、その首に掛けられた高額の賞金が手に入って、都市の治安までも良くなるって一石二鳥の塩梅だ」
「GGO最大の武装組織『鬼ヶ島』の創始者にしてボスがやられたとなれば、組織は弱体化し、やがては解散にも繋がる」
「そしてオレたちは鬼退治を果たした英雄としてもてはやされるってワケなんだYO!」
「………………」
 追い詰めた余裕から彼らは確信した勝利に笑みをこぼす。
 対して今まさに窮地に陥っている鬼城は一切取り乱すことなくまるでこの状況を他人事のように無表情で静観している。
「それじゃ、俺らとGGOの平和のために――――死んでもらう」
 男がウージーを構え、銃口を鬼城の頭に向けた時――――

 ヒュンッ!

 一陣の風が吹いた――――
「………………あれ?」
 ウージーを構えたリーダー格の男が違和感を覚えた。
 撃てない――――引き金を引こうとしているのに、引けない。
 弾切れ? 馬鹿な。ここまでまだ一発も発砲していない。
 動作不良? 冗談じゃない。メンテナンススキルのレベルはそこいらの奴らよりずっと高い。ここに来てそんなヘマしてたまるものか。
 そして何故か鬼城を取り囲む他の仲間たちが唖然とした顔で男に注目している。
 一体彼らが何を見ているのか理解できない。
 現状の把握に疑問する彼に対し、向かいにいる一人がそれそれ! と彼の足下に向かって指を指す。
「?」
 どでかい賞金を目の前になにを見ろと言うんだと思いながら彼は自分の足下を見下ろした。
「ぁ…………」
 ウージーだ。いつも愛用している銃で、今回の鬼城討伐にも使っている。
 ちょっと待て。おかしい。ウージーなら今こうして奴に向かって構えているじゃないか。
 では何故地面に転がっている……?
「がっ……」
 彼は絶句した。引き金を引けないこと、ウージーが足下に転がるウージー。その疑問の答えは至極単純だった。
 地面に、愛用するウージーと、ウージーを握っていた『右手』そのものが、転がっていたのだ――――
「ぐああああああああああああああああッ!!」
 つい数秒前に勝利を確信していた男が突如現れた現実を前に阿鼻叫喚する。
 取り囲む男たちもその光景を目の当たりにしておののいた。
 それと同時に、突如鬼城の前に謎の人物が現れた。
 ボロボロの黒いマントを身にまとい、深くフードを被って顔の見えないその人物は、先ほどまで鬼城を取り囲む男たち中に加わっていた一人である。
 そして目にも留まらぬ早さで味方であるはずのウージーを持つリーダー格の男の腕を切り落とした張本人。

「――――悪いけど、君たちの好きなようにはさせないよ」

 バサリとマントを翻し、被っていたフードを脱いだ時、その素顔が露わになる。


「!?」
 彼らは愕然とした。
 その身なりとは相対的に透けるような白い肌、パラリと宙に舞う長く美しい黒髪。女性と見紛うような姿にパッチリとした輝きのある瞳。
 取り囲む彼らの中にその存在を知らぬ者はいなかった。
「き、キリトさん!?」
 驚愕する男たちを前にキリトはフッと笑みを見せた。
「ど、どうしてですキリトさん!? どうしてキリトさんがこいつの味方をするんです!?」
「えーっと、わたしのことを正義の味方かなにかと勘違いしてるかもしれないけど……」
 キリトの首元にスゥーッと何かが浮かび、表れる。
 黒革で所々に銀の装飾がされ、センターにはペンダント型のアクセサリーの装飾、そこには本来対峙する彼らが討伐するべき敵の紋章が彫られていた。
「そ、そのマークは……!?」
「うん。わたし、鬼城側の人間なんだよね。そして鬼城はわたしのご主人さまなんです」
「ま、まさか……オレたちをハメたのかッ!?」
「わたしはご主人さまのためなら何でもやる。だから、ご主人さまの敵はわたしの敵――――」
 彼の手に持つ光剣の柄に光の刃が形成される。
「ひっ!」
「ご主人さまに銃口を向けた罪……重いよ?」
 黒い剣士はあどけなく微笑んで見せたが、その瞳の奥には明らかな殺気が帯びており、ゆっくりと光剣の切っ先が彼らに向ける。
 その一部始終を目にしていたかの鬼は、彼らの青ざめて絶望する姿にほくそ笑んだ――――

 ※

「ふぅ……」
 光剣を収め、涼しげに歩くキリト。
 周囲にはそこら中に銃を乱射したような弾痕とDEADの表記をされたプレイヤーたちの骸がそこかしこに転がっている。
 ここ最近こういった小競り合いに参加する機会も増えてきた。
 鬼城たちにレイプされ、調教の末に鬼城の牝になることを受け入れて数ヶ月。
 このGGOの中で性の快楽、女の悦びを覚えたキリトはその後も鬼城や他の男たちとの悦楽に興じていた。
 その一方で着実に勢力を伸ばす鬼城の部隊の戦果は野火のごとくで、組織は以前に増して拡大し、武器、人員、拠点などの規模は小国の軍隊に匹敵するのではと言われている。
 しかしその反面、悪名高い彼らに憂れいて敵対する勢力も一層増え、その武力と悪行をなんとか断ち切ろうと彼らを狙った討伐部隊が組織されるようになった。
 鬼城やその幹部には賞金首が掛けられ、それを狙った傭兵や賞金稼ぎも出没するようになり、彼らの行く手を阻んだ。
 しかし一方の鬼城はこれを物ともせず、勢力拡大の時点でこの状況を見据えており、対策を既に講じていた。
 それがキリトだった。
 彼は鬼城の牝であると同時に剣の腕も健在で、再び黒の剣士の異名を轟かせることとなった。
 鬼城の剣士として……。
「……これで全部みたいっすね。いやぁ流石っすよキリトちゃん!」
「えへへ♪」
 この日、組織された討伐隊の中でも一大勢力と言われている一角が外部からも志願者を募って大規模な作戦を立てているとの情報が入っていた。
 表向きキリトは鬼城の側にいることは鬼城の身内以外では知られていない。
 そこで彼は首輪の不可視化偽装を以てこの討伐隊の募集に応募し、討伐隊の中に潜り込んで情報を密かに鬼城に流していた。
 無論、これらは全て鬼城の立てた計画である。
 奇襲による乱戦に持ち込んで鬼城を孤立させ、選抜された少数精鋭部隊で鬼城を仕留める――――
 この討伐隊の作戦がキリトによって筒抜けとなり、鬼城が知るに至った。
 実はキリトは鬼城の牝に堕ちる以前からこの討伐隊とは面識があり、過去に何度か協力して用心棒や賞金首がかかったプレイヤーの討伐に同行していたため、あっさりと信用されて難なく潜り込めたという経緯がある。
 そのためキリトのその剣の腕も評されており、意図も容易く少数精鋭部隊の一員にも抜擢された。
 そうして鬼城はこれらの情報をふまえ、討伐隊の奇襲時、あえて自分が孤立するような動きを見せ、彼らを誘い込んだ。
 結果、勝利を確信した彼らは鬼城を囲い、今正に敵将の首を討ち取らんと意気揚々と攻め込んだ矢先、潜入していたキリトの奇襲を受け、返り討ちにされたのだ。
「よくやったなキリト」
「はい♪」
 討伐隊の惨憺たる有様を一部始終眺めていた鬼城が満足気にキリトの肩に腕を回す。
「あ……」
 肩に回した手をキリトの胸元に滑り込ませ、防具の中、インナーの中へと潜り込んで素肌に到達すると、胸をまさぐり、彼の小さな突起を探す。
 そうして指先にちょんと当たった彼の突起を指で弾いて弄ぶ。
「んっ……あの、ご主人さま……その、みんながっ、見て……あっ……!」
 凛々しく振舞っていた黒い剣士はたちまち甘く蕩けた牝の表情に変わり、周囲の男たちはその光景に釘付けとなった。


「気にするな。お前との仲は既に公認されているも同然。当たり前のように振る舞っていればいい」
「けどっ……みんなが見て恥ずかし――――んっ!?」
 恥ずかしがるキリトを黙らせるように鬼城は強引に唇を奪う。
「んぅっ……ちゅ……ちゅる、くちゅくちゅ……にちゅ、じゅるっ……じゅりゅじゅりゅ……」
 困惑しながらも舌を口内にねじ込まれると呼応するようにキリトは自分の舌も絡め始める。 
 互いの唾液が混じり合ったものをキリトはコクコクと喉を鳴らして咀嚼する。
 やがて唇が離れると、キリトは物寂しげな表情で鬼城を見つめた。
「恥ずかしいんじゃないのか? 嫌なら拒めばいい」
「っ……拒むなんて、出来るわけないじゃないですか……////」
 むすっと膨れた顔をするキリト。
 今度はキリトから口を開き、舌を伸ばして鬼城に甘えるようにキスをついばむ。
 くちゅくちゅと口内で舌と唾液が絡み、混じり合う淫靡な水音が響き渡る。
 主とのキスに夢中になっていたキリトだが、途中何かを察知してキスを中断して後ろを振り向いた。
「うう……」
 DEADの表記がされている討伐隊の屍の中、一人だけかろうじて生き延びている者がいた。
 地面に横たわって動くこともままならない様子から言うまでもないが、完全に虫の息で抵抗する力もない。
「あ、まだ生きてる」
 キリトはまるで地べたを這う虫を見るような目で瀕死の男を見下ろした。
「……死にかけか。止めを刺してやれ」
「はい♪」
 再び光剣の柄を手に取り、スイッチを入れて光の刃を出現させる。
「き、キリトさんっ……」
「ごめんね……けど、ご主人さまを狙った君たちが悪いんだよ? 次はこんなバカなことしないでね♪ それじゃ――――」

 ザシュッ!

「がはっ……!」
 こうして最後の生き残りもキリトに光剣で串刺しにされ、敵方に寝返ったキリトに絶望しながら絶命した。
 結局少数精鋭で挑んだ鬼城討伐隊はキリト一人に全て斬り伏せられ、鬼城はおろか、同時に潜んでいた奇襲部隊の出る幕もなかった。
「っくっくっく、情け容赦ないなぁキリト」
 戦闘不能の相手にも主の鶴の一声で躊躇なく殺傷し、その間に愛嬌すら振る舞うキリトの姿はどこか猟奇的で、以前のキリトとはまるで別人であった。
「ご主人さまの敵は、わたしの敵ですから」
 飼い主に尻尾を振る犬のようにキリトが鬼城にすり寄る、やはりよくやったと褒めるように鬼城はキリトの頭を撫でた。
「っ……ぁ……は、ぁ……」
 首輪の効果で主である鬼城に褒められることにより気持ちが高ぶり、高揚感が湧き上がる。
 頬を赤らめ、熱のある吐息を漏らし、火照ったように発情するキリト。
 彼がこうして首輪により気が高揚すると必然的に主との性の悦びを求めるようになる。
 首輪による高揚効果は人によって異なり、基本は装着者が主に対して最も求めることを促進させる仕組みになっている。
 故に主である鬼城との快楽――――それが今のキリトにとって最も望むことであり、そのためならどんなことも厭わない。
 それが鬼城が仕上げた――――牝のキリトの姿だった。
「あの……ご主人さま……っ……」
 キリトは物欲しそうに上目顔で少々内股ぎみにもじもじとしながら鬼城を見つめる。
「っくっく、あとでご褒美をやらないとな」
「…………はい////」
 恋人みたく主である鬼城の腕にそっと自分の腕を絡めた。
「そうだ。お前にこれをやろう」
 そう言って鬼城がキリトに差し出したのは白く丸い円形の形をした錠剤だった。
「これは?」
「コイツを飲め。別に悪いものじゃない」
「……わかりました」
 キリトは鬼城の手のひらの錠剤をつまみ上げるとそのまま口の中へぽいっと放り込んだ。
「ん……飲みました。結局なんの薬なんですか?」
「っくっくっく……なに、そのうちわかるさ」
「はぁ……」
 不敵に笑う主の思惑にキリトは首を傾げることしかできなかった。
「大将! 連中の陽動部隊もほぼ全滅まで追い詰めました!」
「ほぼ? 全滅じゃないのか?」
「すみません、奴ら敗色が濃くなるや散り散りになって廃墟に隠れたもんで……」
「――――キリト」
「はい」
「……やれるな?」
「…………はい♪」
 堕ちた黒の剣士は光剣を携えて小さく微笑んだ。
 この後、鬼神のごとき勢いでキリトは討伐隊の残党を一人残らず切り捨てたという――――

 ※


「――――すっかり、牝に生まれ変わったなキリト」
「はい…………ちゅ、ちゅぷ……んっ……」
 討伐隊残党を掃討した折、拠点に戻って鬼城の膝の上に座って彼の指をしゃぶるキリトの姿があった。
 敵を倒した褒美として彼が望んだのは主との快楽。
 キリトの性的欲求への依存は高く、身体を重ね、繋がり合うことが彼にとって何よりの褒美だった。
「んぅ、ちゅぷっ……ちゅる、ちゅ…………あ……キス…………ん、ちゅ……くちゅ……」
 夢中になって指を口に咥えたり、ペロペロと指先を猫のように舌でなめるその様は実に淫靡で、鬼城は更にそこに油を注がんとばかりに咥えさせた指を引き抜いてキリトの顎を手に取って唇を奪う。
「っちゅ……ちゅぷっ、くちゅ……んふ……ん、ぁ……」
 キスをしながらも、鬼城の手が自分の胸に伸びていることを察知するや自らの意志で防具を外し、インナーをまくり上げてその白い肌を露わにし、彼の手を自らの胸元へと導いた。
「――――っ……くっくっく、今じゃ俺が言う前に脱ぐようになったな」
「んぅ……だって、ご主人さまの望みに応えるのが牝としてのわたしの……勤めですから」
「今はお前へのご褒美なんだぞ?」
「ん……ご主人さまへの勤めが、わたしのご褒美にもなるんです」
 愛おしげにキリトは鬼城の背に両手を回す。
「昔は泣いて嫌がってたのにな」
 彼は不敵に笑いながらキリトの乳首を指で弄ぶ。
「んあっ……っ、ふ、くぅっ……! だって、あの頃のわたしはっ……あ、んぅぅッ! ほ、本当、のっ……自分、を……否定してたからっ……ッ!!」
「っくっく、今は違うのか?」
「やぁぁ……乳首コリコリらめぇぇっ! ……今のわたしはっ、ご主人さまのものだからぁっ!」
 両方の乳首を指で摘まれて愛撫を受ける度、キリトは甘い牝の声を上げる。
「ふむ、そろそろのはずだが……」
 今日に限って鬼城は執拗にキリトの乳首を指で弄び、責め続ける。
 先端がピンと張ってコリコリと硬いしこりを残した乳首は、集中的に刺激され続けているために淡いピンクから少し赤くなっている。
「んああああああっ! ご、ご主人さまぁ……そんなに、乳首いじめちゃっ……やぁ……」
「もう少しだ」
 指先でつまみ、クリクリと指で捏ね回して刺激し続ける。
「っくああああああああああああああッ!!」
 
 ピュッ! ピュッ!

 鬼城の執拗な乳首責めに耐え切れなくなったキリトは、そのまま乳首だけで絶頂した。
「……出たな」
「はぁ、はぁ…………え?」
 いつもと違うことに気付いたのはその時だ。
 衣服の上にポタポタとこぼれ落ちた白い液。
 しかし今のキリトはズボンも下着も穿いたまま脱いでいなかったので、彼はズボンの中で精を吐き出してしまっていた。
 にも関わらず服の上にあるこれはなんなのか。
「これって……?」
 白い液体。それはキリトは勿論、普段彼を囲む男たちが放つ白濁としたぬめりのある液体とは違い、サラサラとした液体で、しかも肉棒の先端からではなく、キリトの胸の先端から出てきていた。
「ご主人さま、これってまさか……」
「母乳だ。お前の胸から出たものだ」
「っ!?」
 突飛のない言葉を耳にしたキリトだが、それを否定することは出来なかった。
 現にこうして今もキリトの胸からは乳白色の母乳がツーッと垂れてきているからだ。
「ど、どういうことですか?」
「前に飲ませた薬だ。あれはちょっとばかし特殊な奴でな、服用させた相手に母乳が出るようにさせる。たとえ男でもな」
「ひゃっ……」
 垂れる母乳を指ですくい、鬼城はペロリと指先に乗せたキリトの母乳を舐め取った。
「かと言って誰が飲んでも出るという訳じゃない。こいつはM9000番代のアバターでないと効果が出ないようになっている。つまりキリト、これは『お前のために用意した薬』なんだよ」
 薬と鬼城は言っているが、実際は特定のアバターに特殊な機能を追加するための追加パッチであり、その存在はGGO内でも非公式の代物だが、鬼城はそれらをどういった入手経路かは不明だがそれ所持してキリトに与えたのだ。
「わたしの……ため……」
 現実ではまずあり得ないが、この世界ならではの可能性であり、キリトは現実ではあり得ないその可能性の産物をしげしげと眺めた。
「胸は大きくしなくても、出るんですね」
 母乳が出るようになったキリトの身体は外見では何一つ変化はない。
 本来の男としての平らな胸のままで母乳は噴き出ている。
「わざわざ胸を膨らませる理由は大してなかったからな」
「でも……大きい方が良いんじゃないんですか?」
「今のお前の身体の方が魅力的だ。それよりもその乳、そろそろ直に味見をさせてくれるな?」
「っ……は、はい……////」
 おずおずとしながらもキリトは牝である自分の主の前に胸を差し出した。
「っくっく……前とは打って変わって、随分と健気になったもんだな…………っ」
「んっ……」

 ぢゅる、ぢゅるぢゅる……ちゅぷっ……

「んふぁあああっ……っく、ん……あ、ぁぁぁ……」
 舌でコリコリと乳首を弄びながら湧き出てくる母乳を吸い上げる。 
 それまで乳首は一番の性感帯として主である鬼城はもちろんのこと、彼傘下の男たちからも愛撫され続けていた箇所だが、今はそれまでとはまた異なった妙な感覚がキリトの中を錯綜する。
「っくっく……これで下半身の一物がなければ、お前は完全に女だな」


「っ…………」
 この時、キリトが初めて視線を他所の方へ逸らしたのを、鬼城は見逃さなかった。
「……どうした? なにか言いたそうだな」
「いえ、別に……」
 視線を逸らすということは何か別な考えがあるというキリトのある種の癖である。
 しかしキリトはそういったことは自分からは言おうとはせず、そのまま内に秘めてしまう。主である鬼城の機嫌を損ねてしまうのを恐れているために。
「構うことはない。たまには本音のお前も見てみたい。なにか思うところがあるなら言ってみろ――――『キリト』」
「…………っ」
 俯きながらもやがて『キリト』は口を開いた。
「俺……」
 牝であるキリトが主から命じられて本来の、素の『キリト』として彼は口を開き、語り出す。
「怖いんだ……最近、自分がどんどん変わっていくのが…………あんたと交われば交わるほど、知らない自分に変わっていく……」
「ふむ……」
「仕草も、感じ方も、考え方も……全部、女っぽくなってきて……このままだといつか、今の自分が消えてなくなるんじゃないかって……」
 今、キリトには二つの人格があった。
 一つは男として、桐ヶ谷和人としてのキリト。もう一つは牝として、鬼城や男たちに奉仕する牝奴隷としてのキリト。
 快楽に溺れれば溺れるほどキリトの中は女――――牝としての領域が広がって行き、着実に桐ヶ谷和人としての人格を蝕んでいる。
「だからってあんたに逆らうつもりなんてない。あんたの命令なら、俺はなんでもやる……この身体の疼きを鎮められるのは、あんただけだから……」
「だが、そう仕組んだのは他ならぬこの俺だけどな」
「……ああ、わかっている。本音を言えば、全く恨んでないと言えば嘘になる…………けど、それを忘れられるぐらい、俺はあんたに手懐けられた……」
 あの日、シノンによって貶められ、キリトは男たちの慰み者にされた。
 泣き叫んで抵抗するキリトをあざ笑うように彼らは犯し続けた。
 だがそうしていく内に、キリトは犯されることに悦びを覚え始め、挙句の果てには自分を犯した首謀者の奴隷になることを誓ってしまった。
 その日から、彼の世界は変わった。
 本能むき出しの男たちに囲まれ、彼らの欲望のはけ口となって充満する性臭の中、彼らの精を一心に受け止める。
 そして自分を牝として生まれ変わらせた主への忠誠と、奉仕の心を胸に抱いて彼は今こうしてここにいる――――
「キリト、お前は俺にとって最高の牝に変わりつつある。俺はお前を捨てるつもりもなければ手放すつもりもない。今後とも俺の側で牝として奉仕しろ。それがお前の全てだ」
「……そう、だな…………今の俺は……もうあんたなしではいられない…………すっかり、俺はあんたの……ご主人さまの色に、染められてしまいました……」
 俯いた頬をほんのりと赤く染めながら尽くすべき主にキリトは身をすり寄せる。
 まるで恋人でも見るかのような愛嬌のある上目で鬼城を見つめ、彼は火照った身体を鬼城に委ねる。
「いっぱい、可愛がって……下さい――――」
 
 ※

「んっく……ああっ! 俺っ……ご主人さまのものになれてっ! すごく、幸せですっ! あっ! ふああっ!」
 グチュグチュと卑猥な水音が部屋中に響き渡る。
 牝に堕ちた少年の牝穴に指がねじ込まれ、その中をグチュグチュと水音を立てながらかき回される。
 水音の音源となっている彼の腸液は指で刺激される度にその分泌量を増し、その光景は女性が分泌する愛液とそう変わりがない。
 胸はヂュルヂュルと少年の主である大男に吸い付かれ、その先端を吸い上げられると、本来男の身体では出るはずのないほんのりと甘みのある少年の母乳が男の口中に広がる。
 白くきめの細かい肌には余分な肉付きがなく、引き締まっていながらもどこか心地の良い柔らかさがあり、その容姿はやはり何度見ても美少女と対面しているようにしか見えず、男でも魅了されてしまうその少年の肉体を彼は膝の上に乗せて心行くまでその肌を堪能する。
「ったく、相変わらず女みてーなケツしやがって……ずっとこんな紐パン穿いてるのか?」
「らって、これっ……ご主人さまが好きだって言ってたからぁ!」
 ここ(GGO)でのキリトは外見こそ女性と似つかわしいが、性別上は男性であり、無論標準で着用していた下着も男物だった。 
 しかし鬼城たちに犯されて牝となってからは彼らの命令で下着を女物に穿き替えたのだ。
 その下着は黒を基調としているが明らかに布の面積が小さく、後ろの部分は完全に紐と言っても過言ではない。
 元々は余所の課金制のゲームに登場するヒロインが穿いているものらしく、それと全く同じデザインのものをキリトは穿いている。
(っくうぅぅ……恥ずかしい……男なのに俺、こんなに母乳噴き出して……しかも、それをご主人さまが飲んでっ……~~~~ッ!!)
「う、くっ…………は、ぁ……んっ……はぁぁっ……」
 授乳という行為に今も羞恥心を覚えるキリトだが、快楽の前ではそれも霞み始めており、紐同然の下着を食い込ませ、尻肉を鷲掴みにされながら同時に指先で尻穴付近を焦らされ、時に中へねじ込まれてかき回される度に淫靡な甘い声を少年は上げる。
 快楽を感じれば感じるほどキリトの母乳は噴き出す勢いを増し、それらは全て主である鬼城によって吸い上げられる。
(っくぁぁ……俺っ……ますます女の子になってきてるよぉ……)
 胸と尻を同時に責められ、伝わってくる刺激的な快感に彼の男としての部分がビクビクと反応する。
「なんだ? ち○ぽがひくついてるぞ。もうイキそうなのか?」
「ご、ごめんなさい……」
 キリトの肉棒は尚も痙攣を繰り返し、先端の鈴口からは滑りのある透明な液体が溢れ出てきている。
 それは尻も同様で、グジュグジュとなった牝穴から溢れ出た腸液はツーッと下へと伝い、太ももの上を沿って行く。
「尻も良い感じに解れてきたな……欲しいか?」
「っ……は、はいっ! ……欲しい、です」
「ならそこの壁の前に立て」
「っ、はい」
 キリトは言われた通り部屋の壁の方へ向かい、鬼城に背を向けて壁に手をつき、長い腰布をぺろんとめくり上げて尻を突き出す。
 白く引き締まった尻肉。その割れ目に黒い一本の線が伸びる。
 牝となってから穿くよう命じられた黒のTバック。シンプルなデザインだが男を誘う淫靡な魅力がある。反面、下着としての機能は皆無に等しく、前も後ろも隠すべき恥部が下着からはみ出ている。
「っくっくっく、本当に物欲しそうにしているなぁ、この尻は――――」
「っ! ん……っあ、ぁぁ……っ!」
 熱くたぎらせた己の肉棒の先端をキリトの尻の割れ目へ焦らすように擦り付ける。
 なかなか挿入してもらえないことに辛抱が出来ないキリトはもどかしそうに腰をよがらせ始める。
「挿れて欲しくば尻を突き出して両手で尻穴をちゃんと広げろ」
「っ、はい……」
 ほぼ紐同然の黒いTバックを横にずらして両手で尻肉を広げて女の悦びを感じる穴を主の前にさらけ出した。
「ど、どうぞ……」
 ドキドキと胸の鼓動を高鳴らせながら自分を気持良くしてくれるかの肉の棒を今か今かと待ち焦がれる。
「っふ、上出来だ」
「っ、ん……」
 紅潮するキリトを他所に鬼城の熱い先端がキリトの牝の入り口に当たる。
「ッ!! っ……は、んあああああああああッ!!」
「っく! 今日は随分とキツく締めてくるなっ!」
 熱い主の欲望がキリトの牝穴に入り込む。
 それを待ち望んでいたかのように牝穴内の肉壁が進入してきた鬼城の肉棒に密着し、離そうとしない。
 彼がピストン運動をしようと腰を引いて肉棒を半身引き抜いていくと肉壁が尚も離すまいと引っ付いてくる。
 が、再び奥へと挿入すると奥に到達するや再び密着してくる。
 キリトの尻穴内も鬼城の肉棒に負けないくらい熱を帯びており、その熱と共にジワジワと湧いて来る腸液が鬼城の肉棒の滑りを良くしていく。
「ったく、自分から腰まで降りやがって……そんなに気持ちよくなりたいのかっ!?」
「ふああッ! んッ! あうっ! っ、……らってぇ、後ろからぱんぱん突かれるのっ……好きなんですぅ! 自分が、犯(レイプ)されてるみたいでっ! いっぱい! いっぱい感じるんですぅっ!!」
「けっ! 最強の剣士サマがレイプ願望とはなッ! まったく、とんだ変態剣士だ!」
 男にしては細い両手首を後ろから掴み、女性見たく白い繊細な肌で華奢な腰つきをしたキリトの尻に鬼城は己の欲望を乱暴に打ち付ける。
 牝に堕ちてから、彼は自分の身体を蹂躙する男たちにキリトは性的興奮を覚えるようになった。
 以前からキリトには過ちを犯した自分を卑下する面があったが、それが男たちの欲望を受けていく内に歪み、いつしか男たちに犯されることを望むレイプ願望へと変貌していったのだ。
 男たちに犯され、惨めな姿となった自分自信に、キリトは悦びを感じていた。
「ふああああッ!! は、はひっ! お、俺っ! キリトはぁ……ご主人さまの……変態牝ペットなんですぅッ!! おち○ぽ生えてるのにぃ、おち○ぽお尻に入れられるのがぁだいしゅきなぁ変態なんでしゅうぅッ!!」
「っくっく、どうしようもない変態だな。昔のお前に今のお前を見せてやりてぇよっ!」
「んにゃああああッ!! いま乳首コリコリはらめぇッ! おっぱいからミルクが出ちゃいますぅッ!!」
 乳首を捏ね回してキュッと少し強めに引っ張ると、ピュルピュルと白い液体が噴き出るのが垣間見える。
 薬という名のパッチを使用したことにより、男の身体でも母乳が出るようになったキリトだが、やはり男の身で母乳を噴き出すのが恥ずかしいのか、顔を赤くしながら身体をくねらせて噴き出す母乳を鬼城に見えないように隠そうとする。
「隠そうとしたって無駄だぞ! お前の今の姿は記録映像として一部始終全部録画されてるんだからなっ!」
「んはあああああッ! 撮っちゃやらあああッ!!」
「なら止めるか? だが録画を止めれば俺も一度ログアウトするけどな!」 
「えっ!?」


 急な主のログアウト宣言にキリトは困惑した。
 まだ繋がり合っている最中で、一度も絶頂していないこの状況でそんなことを言われるなど、思っても見なかったからである。
「まぁ不完全燃焼は否めないが、お前が望まないのなら仕方あるまい」
「ち、ちがっ……」
「じゃあな――――」
 鬼城は欲望でたぎらせた己の肉棒をキリトの尻穴から引き抜いて、そのままオプションメニューを開いて『ログアウト』を選択しようと手を伸ばす。
「いや! ぃやらっ! 行かないでぇ! やめちゃやらのぉ! こんな気持ちいいの、ご主人さまだけなんだからぁ! いっちゃやらぁ!! ……俺を……一人にしないでぇ……っ、っ……!」
 あろうことかキリトはまるで幼い子供のようにポロポロと涙を流し始めていた。
「なんだ? んな泣く程のことか?」
「もう嫌なんですっ……一人はぁ…………グスッ……」
 ああ、自分はなんて脆いのだろうとキリトは実感する。
 今までソロでやってきているはずなのに、ここに来て孤独を酷く恐れている自分がいる。
 いや、そもそも今までも恐れていたのかもしれない。
 それは今みたく自分に素直になれなかったからだろう。今は鬼城のお陰で自分に素直になれたからこうして内にしまい込んでいた感情が表に出て来ているのだ。
「なら、言うことはわかっているだろ?」
「っ……」
「自分で挿れて懇願しろ。主としての命令だ」
「っ! は、はいっ……」
 上着と首輪以外の物を全て脱ぎ捨てると、背を向けながら鬼城の肉棒に手を伸ばし、そのまま彼の前に尻を突き出す形にして掴んだ肉棒を己の穴へと導く。
「っ、くぁ! んふっ…………いっぱい、撮って……! 俺が……ご主人様に犯されて母乳噴いて中出しされてイッちゃうとこまで全部! キリトの恥ずかしいとこいっぱい撮ってぇぇぇぇぇ!!」
 孤独への恐怖が勝り、最強とうたわれた黒い剣士は快楽を求めて必死に懇願する。
 自分という存在が快楽無くして保てなくなってきていることを実感しながら。
「はっ! そうかよっ……! なら、今日もいつものように中にっ……ぶち撒けるぞッ!」
「はいっ! お、俺っ……ううん、わたしのッ! 中にぃ……いっぱい射精してくださいぃぃ!!」
 黒い剣士は、己が男であることへの理性を完全に捨てた。
 犯されてることへの悦びは彼にとって自身の性別ですら些細な程度にしか過ぎず、主が自分を求める限り自身のアバターで女の悦びをその身に、心に、精神に、刻みこんでいく。
「ならしっかり尻で受け止めろっ! ここでのお前は男に奉仕するのが全てだということをその身に刻み込めッ!!」
「はいッ! キリトはぁ、男の人に奉仕するのが全ての牝でしゅううううッ!!」
 濁流のように押し寄せる快楽にすっかり溺れたキリトは、自らの尻穴を蹂躙する男の肉棒に喘ぎ、突かれる度に自分が男である証の肉棒を勃起させ、ビクビクと悦びを主張するように震わせる。
「――ッ!! 出るぞッ!!!!」
「――――っっ!! ッああああああああああああああああああああああああああッッ!!!!」

 ビュルルッ!! ビュルビュルビュル! ビュビュッ! ビュルゥゥゥゥゥッ!!
 ズビュッ! ビュクビュクッ! ビュッ……ビュクルルルルッ!!

 せり上がる快感が頂点へと達した時、奉仕することへの悦びを躾けられた一匹の牝と、牝を飼う一人の主人は、共に解放感を満たされながら絶頂を迎えた。
 あっという間に尻穴の隙間を満たして収まりきらなくなった鬼城の精は、穴の隙間よりドロドロと溢れ、こぼれ落ちていった。
 一度絶頂したにも関わらず一向に萎える気配のない肉棒を抜かれると、キリトは名残惜しそう引き抜かれた主の肉棒に見送った。
「っくっくっく、今日はいつもより随分牝らしく喘いでたな……男『キリト』としてどうなんだ?」
「はぁ、はぁ……はぁ…………っ…………っ、えへへぇ……♪ もお……自分が男とかなんてどぉでもいぃ♪ おち○ぽ気持ち良ければ女の子でもいいのぉ……」
 何もかもが満たされたかのようにキリトはどこか幼さが残るような無邪気な笑顔を見せていたが、その姿は明らかに妖艶なものとして鬼城の目には写っていた。
 男に奉仕し、女の悦びを男の身で受け止め、感じ取る牝キリト。
 現実と似て非なる仮想世界は、一人の男の歪んだ黒い欲望によって一人の心優しい少年の人格を変貌させた。
 愛嬌と優しさの皮を被って主と快楽のためならどんなことも厭わない淫らで、冷酷な、漆黒の少年に。
「んぅ……あは……♪」
 そうして彼は自らの手で尻穴を広げ、コポコポとこぼれ出る主の精と、自身の身体にマーキングした自身の精液を前に、恍惚とした表情でしばらく眺めているのであった――――

 ※


「ん、はぁぁ……ちゅ、ぴちゅ……れりゅれりゅ……くちゅ、れろぉ……」
 主の前で跪き、今もなお猛々しくたぎった肉棒を愛おしげに舌を這わせるキリト。
 この光景も今では日常となってしまっていた。
 主の性欲の処理は牝としての勤めであり、事後はこうして綺麗に『掃除』をする。
 望まないことを徹底的に仕込まれていつしか望むようにまで躾けられたキリトは、今では男たち誰もが認める牝である。
「ちゅるっ、ちゅ……んはぁ……んふ、っちゅ……ぺろ、ちゅく……」
 恍惚とした表情で自分の身体にも備わっている性器を尚も献身的に舐め続けるキリトの姿を鬼城は優越になりながら見下ろしていた。 
 そうしてキリトがペロペロと下を伸ばして主の精と自分の体液が混じったものをきれいに舐め取っていると――――
 
 ピピピピピピピピピピピッ!

「っ!?」
 突如室内を甲高いアラート音が鳴り響く。
 突然のあまりキリトはビクリと身体を震わせたが、鬼城は慌てる様子もなくおもむろに自身の懐に手を伸ばした。
「……通信だ」
 そう言って彼が懐から取り出したのは、組織内で支給されている連絡用の通信端末である。
 主に緊急時や遠征隊が定時報告をする時によく使われるもので、何か大がかりなことを計画しない限りはそう頻繁に使うものではない。
「……なんだ?」
 端末を耳にあてがい、相手側と何かやり取りをしているようだが、流石にキリトでも相手側の声を聞き取ることは出来なかった。
「…………そうか……わかった。そのまま監視を続けろ」
 結局ひとことふたこと程度で交信を終えると、端末を懐にしまって再び膝元のキリトへと視線を向ける。
 だが鬼城は先ほどと打って変わって険しい表情を浮かべていた。
「ちゅっ……くちゅる…………っ……?」
 何があったのか内心気になっていたキリトだが、奉仕は無断で止めたりするのは牝として御法度だと躾込まれてきているため、キリトはそのまま主の肉棒への奉仕を続ける。
 無論、それは主が会話中でも止められない限りは続ける。
 そうして主の表情が和らぐ気配もなく、やがて奉仕中のキリトの肩にポンと手を乗せると……。
「……もういい。やめろ」
「ぢゅっ……ぢゅぷ……っ、ふぇ……?」
 どういうわけか鬼城は奉仕をやめるよう言ってきた。
「それよりここに来いキリト」
「……っ? は、はい……」
 何故奉仕を中断させられた理由がわからないまま、キリトは恐る恐る鬼城の膝の上に腰を下ろした。
「あの……ご主人さま? っ! あ……んっ……」
 膝の上に座らせたキリトの両脇の下に手を滑り込ませ、胸をまさぐる。
 やはり感度は良好で、乳首を指でクリクリと愛撫する度に愛らしい牝の声で鳴く。
 その最中、鬼城はキリトの耳元でそっと囁いた。
「……近々、また襲撃を企ててる連中がいるらしい。だが今回のターゲットは俺じゃない…………お前だ、キリト」
「ぇ……? 俺、ですか?」
「恐らくもうお前が俺の側にいることが広まったのだろう。先日の討伐隊の仕業だ。だがそれはいい。問題は、奴らが多額の賞金が掛かった俺ではなく、賞金もないお前を狙っているということだ」
「………………」
「お前のここでの強さは大抵の奴らは知っている。その上でお前を狙ってくるということは、よっぽどのアホか手練れか……もしくはお前の知り合いだな」
「俺の……」
「連中が俺を狙ってない時点で金目当てでないのは確かだ。ならお前個人に何か用でもあるのだろう」
「………………」
 鬼城に仕えるようになって数ヶ月。
 いずれこんなことになるのではないかとキリトは考えていた。
 死銃(デスガン)が姿を消してその存在が風化し始めている今、本来キリトがここにいる理由はない。
 死銃はキリトが鬼城と出会う数ヶ月前に忽然とその姿と痕跡を消した。理由はわからない。
 仮想課でも八方手を尽くしたらしいが足跡一つ見つけることが出来なかったという。
 死銃事件の調査は継続されるが、現在はあくまでも小規模な情報収集のみで、全体的な調査規模は以前より大幅に縮小されており、そのあおりでキリトも先日調査担当を解任されたばかりだ。
 そのため当初のGGOにログインする理由がなくなり、本来であれば元いたALOに戻るはずであったが、鬼城と出会ったことにより、キリトに新たなGGOにログインする理由が出来てしまったのだ。
 よって、本来ALOに戻るはずであったキリトが戻らないことに、当然仲間が心配していても不思議なことではない。
「それでどうする? お前の身内だったら? 殺れるのか?」
「っ……」
 キリトの心にチクリとした痛みが突き刺さる。
 ここ(仮想世界)での身内と言われるとキリトの中ではごく限られる。
 見知った誰かが自分を探している。
 しかし相手が誰なのかはさして問題はない。
 問題は、果たしてそれがキリトの身を案じてのことなのか、それともここでの悪名高き組織に属していることを知って先の討伐隊みたく敵として立ちはだかるのか……。
 いずれにせよキリトの心に戸惑いが浮かんだことに変わりはない。
 その時自分は、どうすればいいのかと。
「っ……」
 募るばかりの不安を前に、キリトは自分が牝となった証である首輪のエンブレムにそっと触れた。
「っくっく、自分に素直になれ。上辺だけの感情で選ぶと、後悔するぞ?」
「ふああっ! あ……あ……っく、ぁぁ……」
 焦らすように鬼城はキリトの股間の上をひと撫でし、そのまま竿を握ってやはり焦らすようにシゴき始める。
 自分が鬼城の手のひらの上にいるとわかっていながらもキリトは彼の愛撫に逆らうことはできず、牝の声を上げてビクビクと痙攣し、己の欲望をより大きく、より硬くする。
「あっ……っくああ! は、あ……くっ、あ……」
 今の自分はもう昔の自分とは違う。
 このGGOという仮想世界の中で桐ヶ谷和人はレイプされ、嫌悪のあまり吐き気すら催していたというのに今では犯されることが喜びであり、望んですらいる。そして主の寵愛欲しさのあまり自慰に耽ることも増えた。
 ただでさえ思春期真っ只中の少年は性への好奇心が旺盛で、一度歪んだ欲望に足を突っ込んでしまえばしまうほど土壷にはまり、そこから得られる背徳的な味を覚えればより更なる快楽への貪欲な探求心となって抜け出せなくなる。
 故に、それは桐ヶ谷和人も決して例外ではなく、今の和人――――キリトの心の中での天秤は、『ある一方』の方へと着実に傾き始めている。
「――――しますっ……」
「あ? 聞こえない」
「……たとえ、仲間だろうと……ご主人さまのためなら、敵として……倒しますっ……!」
「ほぅ、それでいいのか?」
 グチュグチュと音を立てながら精液と先走りの汁にまみれて滑りの良くなった牝キリトの肉棒を、鬼城が弄ぶようにシゴきあげて
 手をキリトの口元に差し向けると、キリトはそのまま舌を伸ばして手に付着している自身の体液を丹念に舐め取る。
「ちゅっ……ふぁい……ご主人さまのためなら……ちゅく……俺、なんでもしまふ……」
「っくっく、そうか……」
 快楽に酔いしれてとろけた表情をするキリトに鬼城はさぞ満足げな表情を浮かべながらキリトの頭を優しく撫でた。
「ん……ぁぁ……っはぁ……んっ……」
(俺も……堕ちるとこまで堕ちたな……)
 牝を受け入れて男から女としての喜びを覚えたキリト。
 今となってはそれを制する理性はなく、ただ求めるがままに犯され、求められるがままに奉仕をする。
 もう後戻りはできない。躾けられた身体は『男』を求め続け、心は主に捧げて牝の誓いを立て、そして首には自分が主の所有物であるという証。
 けど後悔はしていない。それが自分で選んだ道。自分が望んでいたことなのだから―――――
「あの、ご主人さま……」
「ん? なんだ?」
「もう一度……シて、ください――――」
 隷堕となった黒い剣士は『男』である自分を『女』に変えた主人の前で再び股を開いた――――

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